変革期
前回は,迷走する初期の時代についての考察をお届けしました。
今回は覚醒の時期…デビュー6〜10作目。
⑥ガールズルール
⑦バレッタ
⑧気付いたら片思い
⑨夏のFree&Easy
⑩何度目の青空か
シングル6作目「ガールズルール」は,センターがこれまで連続で務めていた生駒さんから,白石麻衣さんに初めて交代しました。名実ともに乃木坂「変革の時期」でした。
この時期から,CDのセールスも劇的に向上し始めます。
このことにより,生駒さんへのバッシングが強まっていくのですが,売上げが伸びたのはセンターが交代したことよりも,乃木坂の認知度が上がったことや,センターの交代によって様々なメンバーに光が当たり始めたことによるものだと考えます。
現在の欅坂は,デビュー当初より順調な売上げを上げていますが,これも坂道グループとしての乃木坂の黎明期があったからこそなのではないでしょうか。
「乃木坂の色」発見!
そんな乃木坂の変革の波が押し寄せます。
第7作目「バレッタ」。当時研究生だった堀未央奈さんをセンターに抜擢したことで話題を呼びました。しかし,乃木坂に明らかな変化をもたらしたのがこの「バレッタ」という「曲」そのものだったと考えます。
この曲は,片思いの女の子たちのガールズトークを図書館で気をもみながら聞いている男の子の視点から描かれています。
注目はその曲調。マイナー調。歌詞の内容も,冴えないボクの心情を深くえぐったものとなっており,明るくポップで,分かりやすい前向きさを基本とするそれまでのAKBグループ等の曲とは考え方の根本が異なっている感さえ受けます。
「メンバーの持つネガティブさ」ということをこれまでも紹介してきましたが,グループの個性と楽曲とが結びつきつつあったのがこの「バレッタ」の時期だったと思うのです。
そして乃木坂の覚醒
そして,ついに乃木坂のブランドを確立させたのが8枚目の「気付いたら片思い」でしょう。
この曲は西野七瀬さんが初センターを務めました。この西野さんも,前に出るのがあまり好きではないという究極のネガティブシンキングのメンバー。そんな彼女がじわじわと人気を上げ,グループの1,2の人気者に躍り出てきたのがこの時期です。
楽曲は,恋に臆病だった「ワタシ」が,ふと気付いたら片思いを始めてしまうような男性に恋い焦がれていることを歌っています。
曲調はやはり「マイナー」。前奏からアンニュイな感じが漂います。それまでのアイドルの曲とは一線を画しています。聴いているだけでその心情に引き込まれそうな曲なのです。このような楽曲が乃木坂の主力になっていくことを明確化させたという意味で,「気付いたら片思い」は,乃木坂のコンセプトを完成させたと言えるでしょう。
「乃木坂の色が一番分かる曲を挙げよ」
と言われれば,私だったら迷わずこの曲を挙げます。
乃木坂「哲学路線」
9枚目の「夏のFree&Easy」は,これまでの乃木坂シングルの中で,唯一売上げを落としたまれな作品です。センターは2作連続で西野さん。曲は所謂「夏歌」です。乃木坂は,夏歌に関しては「ポップ」な感じで行くことが多いようです。最新の「裸足でSummer」はちょっとひねってきましたが…
曲そのものは,「夏だからやっちゃおう」という歌詞の通りに,乃木坂としてはあまり深みのないものになっています。人気メンバーがセンターだからといって,曲の魅力がなければ売れないという点で,乃木坂の楽曲が優れているということを語る上でのいい指標になっているのではないでしょうか。
そして10作目。生田 絵梨花さんが初センターを務めた「何度目の青空か」。
またしてもマイナー調の曲。「今の自分を無駄にするな」という歌詞にもあるように,日常に埋没することなく今の自分を見つめて高みを目指せという,何とも哲学的なものです。
哲学を語るようなアイドルっていました?
とても荘厳な曲調でですよ?
これが成立するのが乃木坂なんですよね。また,そんな素晴らしい歌詞や,落ち着いた旋律が評価されることにも喜びを感じます。
この頃になると乃木坂人気にも火がつき始めているのですが,
「曲そのものが評価されているといいな〜」
と,強く願っています。
この「哲学路線」,11作目の「命は美しい」で爆発することになりますが,それは次の機会に…