東野さんの「色」がよく出た短編集
3/30発売の,東野圭吾さんの最新刊「素敵な日本人」を読みました。手軽に読める短編集となっています。
まさに「一気読み」という表現がふさわしく,長年の東野さんのファンにはやや物足りなさが残るかもしれませんが,まあ,最近の東野さんは,このような「軽めの」作品が目立っていますので…
東野さんの「色」とは…
では,私が考える東野さんの「色」とは…
①警察官等の目線による「重厚な推理もの」(事件に深い人間関係や心情の交錯が絡む)
→「麒麟の翼」「新参者」「祈りの幕が下りるとき」「夢幻花」等
②事件に巻き込まれた民間人が主になって事件を解決する「ミステリー活劇」的なもの
→「白銀ジャック」「疾風ロンド」「雪煙チェイス」等
③犯罪者側中心に描かれた「心理サスペンス・推理」的なもの
→「白夜行」「幻夜」「さまよう刃」「流星の絆」「容疑者Xの献身」等
④SFチックな要素を含んだファンタジーミステリー的なもの
→「ナミヤ雑貨店の奇跡」「ラプラスの魔女」等
⑤脳移植や輪廻転生的な要素を取り入れたサイコサスペンス的なもの
→「プラチナデータ」「人魚の眠る家」「秘密」等
⑥科学技術や工学的なトリックを取り入れた「サイエンス推理」的なもの
⑦壮大なテーマに挑む「社会派活劇」的なもの
→「使命と魂のリミット」「天空の蜂」等
⑧シニカルに富んだ「日常サスペンス」的なもの
→「恋のゴンドラ」等
といったところでしょうか。
本作「素敵な日本人」には,「宝石」で発表された9作が納められています。そして,上記の「色」違いの多様な作品が見事に並んでいるといった印象です。
もちろん短編ですので,「読み応え」という点では物足りませんが,気軽に東野さんの多彩さを味わうという意味においては,適した作品といえるでしょう。
「東野さんの魅力にこれから触れてみたい」
という方にとって,最初に手にする作品としてもお薦めかもしれません。(まあ,そんな方もあまりいないかもしれないくらいの大御所ですが)
今後の東野さんに期待したいこと
最近の東野さんですが…いわゆる「本格派」の作品がめっきり減ってしまっているようで心配です。
「加賀恭一郎シリーズ」「ガリレオシリーズの長編」を含め,「重厚な長編社会派推理もの」「心理サスペンス長編」を是非読みたい! このように感じているのは,私だけではないでしょう。
なぜかSFものや活劇ものに偏っていますよね,最近。これが,東野さんの趣向の変化なのか,それとも加齢から来るものなのか…どうも気がかりなのです。
東野さん,「麒麟の翼」「新参者」や「容疑者Xの献身」白夜行」「幻夜」を読んだときの感動や読み応え感を味わいたいのです。じっくりと腰を据えて取り組んだ作品を期待しております。