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読了 「書店ガール6〜遅れてきた客〜」 成熟する碧野 圭さんの筆力/お仕事感の生々しさ

待ってました!「書店ガール6」

 読書好きの皆さんにとって,
「次はいつだろう…」
と,次巻を心待ちにしている「シリーズ物」ってありますよね。

 私にとってその一つが,碧野 圭さんの「書店ガール」シリーズです。

 待ちに待った「書店ガール6」が発売になりました。

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 元々このシリーズを知ることになったきっかけは,AKB48渡辺麻友さんと稲森いずみさんがダブル主演して話題となった「戦う! 書店ガール」を観たことでした。

 このドラマ,視聴率がやや低迷し,1話カットの打ち切りになってしまったのですが,私は内容的には悪くなかったと感じていました。書店員さん達の苦悩や喜びがストレートに描かれていましたので…

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 まあ,後に原作を読んで,
「結構ドラマ用に(いや,まゆゆ用に)脚色されているな」
と感じました。あまり渡辺さんを意識せずに素の「亜紀」として脚本が書かれていればよかったのでは…と感じたものです。

 理子役の稲森さんは中間管理職役を好演していましたので…

 

 とまあ,本題からそれるドラマ論は置いておいて,この「書店ガール」シリーズは

・「理子と亜紀」を中心に描かれる「パート3」までの部分と,
・次世代の書店ガール「彩加,愛奈」,ラノベ作家で彩加の店のアルバイト「田中」,亜紀の夫で編集者の「伸光」らの群像を描く「それ以後」

に大きく分けられます。

 「パート6」の本作は,彩加と伸光の転機が,パラレルに描かれます。

 いや〜,なかなかの力作でした。

 

キャリアを積む上で突き当たる壁,そして選択…

 所謂「お仕事小説」といいますと,比較的アップダウン激しく,息をもつかせないほどに様々なことが起こってしまうものが多いのですが,本作はそれぞれのキャリアを積む上でどうしても逃げようがない事柄にじっくりと向き合い,結論を出そうとする彩加と伸光の葛藤が重厚に描かれています。

 彩加は取手の「駅中店」の閉店問題,伸光は担当ラノベのテレビアニメ化問題。

 この2人の課題の共通点は,

◇自分自身の問題ではなく,組織上,人間関係上のつながりが自分を縛っていること
◇自分の仕事に対する真摯なる思いが決断を迷わせること
◇最終的にその人間関係や身近な人の一言に救われる形で道が切り開かれること

でしょうか。

 

〈ネタバレになるので多くは書けませんが…〉

 彩加に関しては,店の閉店,その後の身の振り方について悩みます。

 その悩み,悲しみを和らげてくれたのは店のバイト達であり,ラノベ作家田中の成長であり,それまで取手店を応援してくれた地域の書店仲間や伸光のような編集者達でした。
 最終盤で「理子」がさりげない励ましにやってくるシーンなどは,「シリーズ物」の味付けでもありました。

 また,「身の振り方」については,パン職人大田との関係で全く予想外の方向へ話が進んでいきます。これ,「パート7」への布石ですよね。楽しみです。

 いずれにせよ,理想の書店員へと突き進む「彩加のまっすぐさ」をとても上手に描いていると感心しました。

 

 伸光に関しては,「編集長」としての自分の立場に押しつぶされそうになる部分が「あるある」です。部下を信頼できないというわけではないのだが,「自分がやらなければ…」という思いに支配されていくことってありますよね。

 どうしようもなくなったときに支えてくれたのは妻の亜紀でした。仕事人としての責任とプライド,夫・父としての家庭人としての立ち位置。亜紀の一言で伸光が救われる場面があります。

 皆さんも実際に読んで探してみてください。

 それにしてもパート6での亜紀さん,素晴らしい良妻賢母として描かれています。いざというときにこのように支えてくれる妻がいたら,幸せなことこの上なしです。

 

長期シリーズ化と碧野さん飛躍の予感

 メインに描く人物や直面する内容を上手にスライドさせることで,ストーリーの新鮮さやシリーズ物としての世界観を膨らませることに成功している「書店ガールシリーズ」。今後ますますストーリーが膨らんでいく予感がします。
 是非とも長期のシリーズ化をお願いしたい。

 また,全作読んでいる者としては,著者である碧野さんの力量が向上していることをひしひしと感じます。
 以前は説明の仕方がくどかったり,前のめりになった叙述があったりして気になった部分もあるのですが,本作はいい意味で「あっさり」と書けているのです。

 あまり深入りすることなく,読み手に預けるというような書き方ができるようになってきていることを強く感じます。しかし展開に厚みを増しているのは,著者として伝えたいことを登場人物間のやり取りであったり,本作であれば文中で登場する書籍の一節をキーセンテンスとしてラストまで活用したりと,構成上の伏線を活用できるようになったからでしょう。

 筆力が大きくレベルアップしたと感じます。

 彩加,伸光,田中の奮闘はもちろんですが,理子,亜紀を前面に出した展開も読んでみたい…今から今後数作分の内容が気になって仕方がありません。

 

書店ガール 6  遅れて来た客 (PHP文芸文庫)

書店ガール 6 遅れて来た客 (PHP文芸文庫)