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読了 東野圭吾「マスカレード・ナイト」〜さすがの筆力も「策士策におぼれる」〜

「マスカレードシリーズ第3作」〜テーマは人間の「仮面性」〜

 東野圭吾さんの最新作で,「マスカレードシリーズ第3作」となる「マスカレード・ナイト」を読みました。

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 ちなみに,これまでの2作に関しては以前の記事に書かせていただきましたので,以下をご参考になさってください。

 さて,最新作となる本作も,一流ホテル「ホテル・コルテシア東京」を舞台に,行き交うホテル利用者の人間模様や,とある殺人事件の捜査が入り乱れる展開となっています。

 主人公もこれまでと変わらず,警視庁捜査一課の「新田浩介」とフロントクラークからコンシェルジュへと格上げされた「山岸尚美」とが協力しながら事件解決に向かっていく筋書きです。

 これまでの作品も,山岸曰く,
「ホテルを利用されるお客様は少なからず仮面をかぶっていらっしゃる。」
というように,人間の表側と裏側の両面を描くことで「一流ホテル」という舞台効果を狙っていました。
 しかし,本作はこれまでの作品以上に「仮面」という言葉やその意味合いが事件解決に向けての大きな鍵となっています。

 

「わかりやすさ」にかけてはピカイチの東野さん,さすが!

 ネタバレになりますので多くは書きませんが,本作,実に多種多様な人物が登場し,それぞれに事情を抱えています。本題となる殺人事件に関係している者,一見関係なさそうに見えて実は鍵になる人物,疑わしそうに見えて事件とは全く関係ない者等,東野さんの「書き分け」は実に見事です。

 並みの作家さんであれば,これだけの情報量を扱うとなると,途中で混乱をきたすものですが,全くそのようなことがないんですよね。平易な文章であり,かつ,特にまどろっこしい説明を挟むでもないのに人物や事件の背後まで描いている…これだけで素晴らしい才能です。
 「わかりやすさ」「読みやすさ」にかけては,東野圭吾さん,池井戸潤さんが双璧だと常日頃考えておりますし,やはりそのような方の本は売れるわけですね。もちろん内容も伴っているからでしょうが。

 本作も正に「一気読み」。引き込まれるように読み進められるという点に関しては保証いたします。

 

「そんなのあり?」というご都合主義が鼻につく…

 では内容面はどうかというと…

 450ページのうち,終盤の「65ページ」ほどが,犯行に関わる人物達の「独白」や「自供」という形で描かれています。

 ここが問題なのです。つまり,それだけの分量を「後付けの説明」として盛り込まなければ,事件の全容を描き切れなかったということになります。
 通常であれば,ストーリー展開の中で事件解決のための伏線なり十分な情報が盛り込まれており,終盤に「ちょっとした種明かし」的な解説的文章を付随させることで,読み手を納得させるはずです。
 しかし本作は,事件解決のための様々な「事情」があまりに都合よく練り上げられており,「作り話」としての東野さんの筆力は相当なものと感心させられるものの,最低限必要な「リアリティ」が感じられない残念な結果となっています。

 正に「策士策におぼれる」といった感じ。
「いくら何でもそんなに都合よく事は運ばんだろう!」
と突っ込みたくなるネタが満載でした。東野さんの自己満足に付き合わされているようで,何か鼻につきます。

 まあ逆に,
「よくぞここまでゴールから逆算して様々な布石を織り込んだな。」
という感を受け,それはそれで楽しめるのですが,「推理的要素」を楽しむのであれば逆効果だと強く感じました。

 また,山岸のキャリアに関する件が一つ大きく取り上げられるのですが,読み終わると
「本筋と関係の内部分で分量割きすぎ! むしろこの部分が本筋の推理的要素の邪魔になっている。」
と思えるのです。
「巧さは感じるが,厚みに欠ける」
とでもいうのでしょうか,メインとサブのストーリー展開や書き込む分量,濃さ等,読者を惑わせない責任が著者にはあるはずです。今回はそこを若干踏み外したかな…と感じさせるところが残念です。

 次作こそは「重厚な推理もの」を!
 頼みますよ,東野さん!

マスカレード・ナイト

マスカレード・ナイト

 

 

 

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